アンジェルマン症候群の知的障害を改善しうる薬剤が発見されました

 北海道大学大学院医学研究院の江川潔助教授、浜松医科大学の福田敦夫教授(研究当時)らの研究グループは、アンジェルマン症候群における、神経機能障害のメカニズムの一つを解明し、知的障害を改善しうる薬剤を特定しました。
 今回、研究グループは、クロライドイオンによって惹起されるGABA作動性神経伝達に注目し、神経細胞内クロライド濃度を調整するイオントランスポーター、NKCC1、KCC2の発現がアンジェルマン症候群モデルマウスでは異常となっていることを見出しました。神経細胞内にクロライドイオンを汲み入れるNKCC1は増加、汲み出すKCC2は減少しており、NKCC1を抑制することが知られている利尿薬のブメタニドを慢性的に投与すると、モデルマウスの認知機能障害は改善することが明らかとなりました。また神経細胞のGABA持続電流は減少しており、細胞内クロライド濃度の制御は様々な機序で障害されていることが示唆されました。
 ブメタニドは脳内への移行性が低いため、アンジェルマン症候群患者への治療応用は副作用の観点から困難が予想されます。しかし、脳NKCC1あるいはKCC2を標的とした薬剤は他の神経疾患の治療目的に近年開発が進んでおり、今回の研究がアンジェルマン症候群患者の知的障害を改善させる治療法の確立につながることが期待されます。
 なお、本研究成果は、2023年4月17日(月)公開のScientific Reports誌に掲載されました本
論文名:Imbalanced expression of cation-chloride cotransporters as a potential therapeutic target in an Angelman Syndrome mouse model(陽イオン-クロライド共輸送体発現の不均衡はアンジェルマン症候群モデルマウスにおける機能改善の対象となりうる)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-023-32376-z